Online eBook Library
(class:authorbox)
著者:Katherine Dolbec and Joe Ravera
翻訳:鈴木優子(トヨタ記念病院 救急科)
監訳:渡瀬剛人(藤田医科大学病院 救急医学・総合内科学講座)
 
概要
肩関節脱臼は,外傷や,後方に手を伸ばす等の最小限の動作によって生じる.前方脱臼が最も多く,肩の外側が四角く突出してみえ,肩の可動域が狭くなる.整復にはさまざまな手技があり,いくつかの手技に慣れておく必要がある.整復は鎮痛薬なしで行うことが可能だが,困難な症例では処置前の鎮静薬と鎮痛薬(procedural sedation and analgesia:PSA)を要する場合がある.整復後,安静のため三角巾で腕を吊り,脱臼の原因となった活動や動作を避け,早期に肩と肘を穏やかに動かすよう指導する.整形外科のフォローアップを行うべきである.
 
キーワード
前方脱臼
肩関節前方脱臼
腋窩神経損傷
Cunningham法
肩甲上腕関節脱臼
肩甲上腕関節
関節窩
肩関節下方脱臼(luxacio erecta)
Hennepin変法
後方脱臼
肩関節後方脱臼
反復性肩関節脱臼
整復手技
肩甲骨回旋法
肩関節脱臼
肩が外れる
肩関節の整復
Spaso法

臨床像  
    患者は片方の腕を反対の手で抱えながら,患側の肩関節に,動かすと増悪する激しい痛みがあると訴えて来院する.患者は“肩が外れた”と言い,痛みのため動かすことができない.前方脱臼の患者は,腕を固定し,わずかに内旋し,外転させていることが典型的である.
     
    多くの場合,患者は側方かつ水平に腕を上げた状態(“クォーターバック・ポジション”)から,その腕が後方に向かい“てこ”のようになったときや,転倒して手をついたときに脱臼する.
     
    反復性脱臼は,自動車の運転席から後部座席に手を伸ばしたときや,眠っている間に寝返りを打ったとき等,比較的小さな力で生じうる.
     
    肩関節脱臼は,肩甲上腕関節において,上腕骨頭が関節窩から分離した状態を指す.
     
    脱臼した上腕骨頭により三角胸筋溝は膨隆し,上腕骨頭に本来あるはずの肩峰下が空になり,肩峰は外側に突出しているようにみえる(128.1).
     
    肩関節脱臼のうち,90~98%は上述のような前方脱臼である.その他の大部分は後方脱臼であり,通常は外傷(症例の67%),てんかん発作(同31%),高電圧の電撃(同2%)によって引き起こされる.患者は肩関節痛のみを訴え,腕を内旋・内転させ抱えて来院する.後方脱臼はAP像(Anterior- Posterior view)やスカプラY撮影ではわかりにくいことがある.上腕骨頭の内旋位(いわゆる“light- bulb sign”)が唯一の徴候である場合がある.もしAP像やスカプラY撮影の読影が難しく臨床判断がつきかねる場合は,軸位撮影(Axillary view)を行うべきである(図128.2).
     
    下方脱臼(luxatio erecta)はまれであり,受傷時に腕が頭部より上にある状態で発生する.高エネルギー外傷でみられ,特に転倒時に頭上の固定された物体をつかむことで起こる.患者は前腕を額の高さまで上げた状態で来院し,“腕を下ろせない”と訴える.このようなまれな脱臼には,神経血管損傷や骨折が伴うことが多く,緊急の整形外科医の診察が必要となる.
    閲覧にはご購入・ログインが必要となります。

    ご購入はこちら
    ログインする