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著者:Katherine Dolbec and Joe Ravera
翻訳:大野孝生(藤田医科大学病院 救急医学・総合内科学講座)
監訳:渡瀬剛人(藤田医科大学病院 救急医学・総合内科学講座)
 
概要
手根管症候群(CTS)は,手をよく使う患者に頻度の高い障害である.典型的には正中神経分布において筋力低下,疼痛,錯感覚がみられる.Tinel徴候とPhalenテストはCTSの古典的な臨床所見であるが,診断における実用性は不明である.しかし,同側の別の指と比較した示指の感覚低下は,CTSのEMG所見と相関する.CTSが疑われる患者には,手を酷使しないようアドバイスし,前腕の中間位を維持するために副木を使用するべきである.急性疼痛の緩和には,経口ステロイドによる抗炎症療法やステロイドの手根管内注入も用いられる.薬物療法に抵抗性の症例では,外科的管理のために整形外科への紹介を考慮する.
 
キーワード
手根管内注入
手根管症候群
CTS
筋電図検査
EMG
内視鏡下手根管開放術
手挙上テスト
手の錯感覚
副腎皮質ステロイド注射
正中神経絞扼
神経伝導
ファーレン法
Phalenテスト
外科への紹介
母指球萎縮
Tinel徴候
横手根靱帯
掌側手根靱帯
手首の副木

臨床像  
    患者は,手や指に痛みやしびれ,または「針やピンで刺されるような」感覚を訴える.患部の手には浮腫がないのに腫脹や張り感がある他,冷感を伴うこともある.発症は突然であったり徐々にであったりするが,手を長時間使用した後や,運転中や本を持ち上げるときにこの症状は最も顕著になる.握力が低下し,器用さが損なわれ,物を落としたり,瓶を開けるのが難しくなったりすることがある.症状は通常夜間に悪化し,患者は目を覚ますことがよくある.ラケットボールやハンドボール等のスポーツや,組み立てライン作業や振動工具(例:ジャックハンマー)の使用は,手根管症候群(CTS)と関連していることが多い.CTSは,関節リウマチ,サルコイドーシス,多発性骨髄腫,白血病,糖尿病,甲状腺機能低下症,先端巨大症,痛風,腎不全,肥満,妊娠,更年期等,多数の全身状態とも関連している.利き手は最初に影響を受けるかもしれないが,不快感はしばしば両側性であり,手首または前腕の痛みを含むこともあるため,手全体が原因と思われることがよくある.しかし,特定の身体診察により正中神経分布(母指,示指,中指)に局在することがわかる.手を酷使すると,ほぼ必ず症状が悪化する.症状を緩和するために,患者は温度計を振り下ろすように手首をぶらぶらさせることが多い(フリックサイン).症状がより進んだ症例としては,母指の筋力低下や母指球の萎縮がみられることがある.片方の手に症状がより重いことが典型的だが,前述のように両手が侵されることもよくある.
     
    身体診察では,錯感覚と感覚鈍麻は正中神経分布に局在する(場所は変わることがある,101.1).筋力低下がある場合は,正中神経支配の内在筋に局在している.神経支配は個人差がありさまざまであるが,正中神経が最も確実に支配している筋肉は,母指の外転筋と対立筋(図101.2)である.CTSは典型的には30歳以降に発症し,男性よりも女性に3倍多くみられる.
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