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著者:Katie M. Wells and Deborah Governale
翻訳:森岡慎也(名古屋掖済会病院 救急科)
監訳:渡瀬剛人(藤田医科大学病院 救急医学・総合内科学講座)
 
概要
急性中耳炎(acute otitis media:AOM)は主に3歳未満の小児の疾患であるが,5歳までの小児が罹患することがある.AOMの直接的な原因となる年齢関連の要因は,未熟な解剖学的構造と免疫機構に加えて,病原体への過剰な曝露があることである.細菌はAOMの主な原因ではないが,最終的に感染を増悪させる要因となる.AOMは,併存疾患や年齢によっては抗生物質を必要とする場合がある.
 
キーワード
耳漏を伴う中耳炎(acute draining OM)
急性中耳炎
鼓膜の膨隆
水疱性鼓膜炎
耳の感染症
耳痛
中耳滲出液
滲出性中耳炎
気密耳鏡検査(pneumatic otoscopy)
自然消退
鼓膜炎症

臨床像  
    急性中耳炎(acute otitis media:AOM)では,成人や年長児は通常急性発症の耳痛(あるいは/および発熱)を訴える.上気道感染症の症状を伴う場合と伴わない場合がある.乳幼児の場合,子どもの不機嫌や食欲低下,不眠を保護者が訴えることがあり,発熱や耳を引っ張る動作を伴う場合がある.実際の診断は,症状や病歴からではなく,鼓膜の所見(36.1,図36.2)から下される.鼓膜は著明な発赤を示すことがあるが,多くの臨床医が研修中に教えられたのとは異なり,鼓膜の発赤はAOMの所見として最も特異度が低い.
     
    中耳の滲出液の増加と強い炎症の波及により,AOMの診断に不可欠で重要な鼓膜所見が認められる.この所見は,緊満感や鼓膜の膨隆,目印となる耳小骨の不明瞭化,気密耳鏡検査(pneumatic otoscopy)での可動性低下として観察される.正常な鼓膜は,突風で張った帆のようにすばやく動く.鼓膜の後方に貯留液があると,動きが鈍くなるか,まったく動かなくなる.鼓膜穿孔や,外耳道炎に起因しない急性の化膿性耳漏がある場合も,AOMと確定診断できる(第35章を参照).
     
    鼓膜の血流増加の所見や発赤は,炎症の可能性を示唆しAOMの診断に寄与するものの,確定診断するには不十分であることに注意する.小児は激しい啼泣により,発赤以外に異常のない鼓膜所見を呈することがよくあることに留意する.したがって,このような状況で発赤のみがAOMを疑う唯一の所見である場合,AOMと診断することを避ける.
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