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まえがき
 
『マイナーエマージェンシー』第4版まえがき
『マイナーエマージェンシー』のまえがきを書かせてもらえることは,最上の喜びである.本書に書かれている疾患は頻繁にみかけるものであり,また紹介されている症例のほとんどは日常的に経験する.この書物の内容は救急医療を実践するための礎となるものである.これらの病気やけがの治療は,急性期医療の基本であり,うまく対処すれば,ほとんどの患者は元通りに回復する.
 
私はこれまでの救急医療のキャリアにおいて,開胸して大動脈を遮断クランプしたことが少なくとも12,13回はある.いずれも出血は止まったが,みな12時間以内に亡くなってしまった.本書はこういった超重症についてのものではない.私が治療した,角膜異物で受診した患者(おそらく1000人以上いただろう)はすべて快方に向かった.単純でわかりやすい症例は,多くの場合予後が非常にいい.しかし,単純だからといって重要でないというわけではない.角膜異物の患者に,鎮痛点眼薬の前後で痛みがどれだけ改善したかを聞いてみてほしい.
 
舞台の演技と同じく,救急医療において小さな役など存在しない.それぞれの患者の訴えが適切に評価され,治療されるべきである.きちんとした病歴,正しい身体診察,評価,そして治療が今も変わらず診療の基本である.患者やその家族にとって,正しい医療を提供することは常に重要である.患者にとって,とるに足らない緊急事態など存在しないのだ.自分自身や自分の家族がそのような境遇にいれば,われわれが真剣に対応してくれることを期待している.
 
この教科書は,患者の訴えがどのようなものであれ,患者に安心感を与え,適切な評価を行い,簡潔な治療をすることが常に最善であることを思い出させてくれる.本書で取り上げられている医学的問題には,心理的側面と身体的側面の両方があり,その双方に対処する必要がある.医師が決定権をもつ時代は終わり,患者を診療に参加させることが最善の診療なのである.患者にとっては,すべてがわからないことだらけで恐ろしい思いをするわけだが,患者を診療のパートナーにすることが,私たちが提供できる最良の診療となるのである.
 
Gregory L. Henry, MD, FACEP
Clinical Professor
Department of Emergency Medicine
University of Michigan Medical School, Ann Arbor