監訳者序文
ER型救急.
それは主にアメリカで発達した救急スタイルであり,1〜3次すべての救急患者を受け入れる姿勢に私は研修医の頃に共感し,それをキャリアとして選びました.3次救急こそ救急医療だという声を聞きますが,どっちがあるべき救急のスタイルなのかに正解はないのかもしれません.ただ,地域住民の救急に応える姿勢こそ求められる救急のスタイルだと勝手に思い込んでいます.決して自己満足であってはいけません.
この1〜3次すべてを受け入れるスタイルに欠かせない知識がマイナー救急といわれている分野です.特に1次・2次救急ではこのマイナー救急を主訴として診療することが多く,きちんとした知識を持ち合わせ,適切な診療を提供しないといけません.マイナーといえども,眼科疾患や縫合など機能・美容予後を大きく左右する疾病も多く含まれていますし,かといってそれらマイナー疾患をすべて専門科に回していると,「振り分け屋」と呼ばれるだけでなく,各専門科医師も疲弊してしまいます.
私がアメリカで救急医として重症患者が多く搬送される外傷センター(もちろんここも1〜3次すべてを受け入れています)で13年間働いていましたが,重症患者を見る傍で,ER医が眼の診察(視力,眼圧測定,細隙灯など)を行っていましたし,扁桃周囲膿瘍もER医がドレナージしていました.これらすべてを日本の医療現場で行うのは難しいかもしれません.しかし,各専門科にすぐに診てもらえない状況では,患者はマイナー疾患をもしっかりと診られる医師に診てもらいたいと思っているのではないでしょうか.
本書は多種多様な患者が受診する医療現場で働く診療者に役立つ本と自負しています.初版から始まり,第4版の本書では痒いところに手が届く,救急の分野では非常にありがたい内容が満載です.その監訳に関われたことはこの上ない喜びです.
今回は翻訳に関わってくださった全国の医師仲間の皆様にまずお礼を申し上げたいと思います.また,私のわがままに誠心誠意耳を傾けてくださったエルゼビア・ジャパンの稲吉 力様を始めとした編集部の皆様に感謝申し上げます.最後に,私が駆け出しの頃にアメリカ救急を見学に行った際には色々と病院見学とプライベートで相手してくださった原著の著者でもあるDr. Ramsey Herringtonに少しでも恩返しとなれば,この上ない幸せです.
藤田医科大学病院救急医学・総合内科学講座
渡瀬 剛人