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著者:Katherine Dolbec and Joe Ravera
翻訳:五島隆宏(藤田医科大学病院 救急医学・総合内科学講座)
監訳:渡瀬剛人(藤田医科大学病院 救急医学・総合内科学講座)
 
概要
筋筋膜性疼痛症候群はよくみられる疾患であり2つに分類できる.1つまたは複数の片側に限局したトリガーポイントをもつもの,または多数かつ広範囲でびまん性,不明瞭で限局しない両側性の筋痛を特徴とするもので後者はしばしば線維筋痛症と診断を受ける.線維筋痛症の定義に合致するためには18ヵ所の筋痛点のうち11ヵ所以上で疼痛を確認する必要がある.線維筋痛症の治療法としては有酸素運動,併存する疾患の治療,温湿布,三環系抗うつ薬または類似薬剤の使用が挙げられる.トリガーポイントが存在する場合は,最も圧痛の強い領域に対し通常は局所麻酔薬を用いて,時にステロイドを併用した注射を行う.非ステロイド性抗炎症薬や筋弛緩剤の内服,温湿布,軽いストレッチエクササイズ,マッサージ,および誘因となる因子の治療も行ってよい.
 
キーワード
体軸筋
慢性びまん性筋痛
きわめて圧痛の強いトリガーポイント
線維筋痛性疼痛
線維筋痛症
筋痛
筋筋膜性疼痛
筋筋膜性疼痛症候群
梨状筋症候群
腰方形筋
張りつめた筋線維
圧痛点
トリガーポイント
トリガーポイント注射

臨床像  
    筋筋膜性疼痛症候群は一般的に25~50歳の患者が緩徐発症の局所的,領域的な片側の線維筋痛性疼痛で発症し,時に動けない状態となりうる.急性外傷や,腕を自由にするために受話器を耳と肩の間に挟む等の誘因となる動作,長時間の上半身を屈曲する動作,習慣的な姿勢の悪さ,反復運動,不適切な体勢で行う重い荷物の持ち上げなどの病歴があるかもしれない.最も一般的な部位は頸椎や肩甲骨の後部,胸部や腰椎側方の軟部組織等,姿勢を維持するために使用される体軸筋である.
     
    痛みのある領域を注意深く診察すると1つまたは複数のトリガーポイントを見つけることができる.検者が指で強く押すと苦悶様表情となり,泣き叫び,飛び上がるほどである.そこにある筋肉には直径2~5 mmの小さな硬い結節,小塊,または張りつめた筋線維が含まれ,きわめて圧痛の強いトリガーポイントと再現性のある痛みをつくり出している.痛みはしばしば神経根症のようなパターンで放散し,頸椎または腰椎椎間板ヘルニアのそれを模倣する.
     
    一方,線維筋痛症の患者は広範かつ両側性,対称性に筋骨格系の疼痛がある.疼痛は放散しないが,多数の圧痛点が存在する.患者はしばしば抑うつ的で感情的または身体的にストレス下にあることが多く,慢性的な疲労感や睡眠障害,過敏性腸症候群,認知障害,頭痛,朝のこわばり,手足のしびれや腫れを自覚している.その他合併する症候としては膀胱刺激症状,顎関節症候群,筋筋膜性疼痛症候群〔訳注:筋筋膜性疼痛症候群の一部と線維筋痛症は症状が類似しており,そもそも合併しうる〕,むずむず足症候群,情動障害等が挙げられる.寒冷または暑熱といった天候も疼痛の誘発因子の1つであったりする.
     
    両症候群はともに大部分が女性に発症する.また疼痛は非関節性で異状なバイタルサインはなく,疼痛部位に腫脹,紅斑,熱感はみられない.
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