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著者:Jeffrey R. Sawyer and David D. Spence
翻訳:畑野崇(北九州市立総合療育センター),畑野美穂子(北九州市立総合療育センター),岩本美帆(佐賀整肢学園こども発達医療センター),杉田健(佐賀整肢学園こども発達医療センター)
編集:中島康晴(九州大学整形外科)

一般原則  
    骨折は小児によくみられ,毎年1000人あたり12~30件の割合で発生する.出生時から16歳までの間に骨折が起こるリスクは,男児で42%~64%,女児で27%~40%と報告されている.小児および思春期では,身体疾患の存在,骨およびその他の結合組織の弾性の増大,ならびにより年少の小児における運動コントロールの稚拙さ,および大きな頭体重比等,独特の生理的特徴のため,成人とは異なる骨折パターンがみられる.小児の骨折のほとんどは長期の合併症なく良好に治癒するが,特定の骨折,特に成長軟骨板および関節面に及ぶ骨折は,重大な合併症を引き起こす可能性がある.
     
    小児は成人と異なり,成長に伴って骨折のリモデリングが可能で,特に隣接する関節の運動平面における骨折ではリモデリングの可能性が高い.冠状面での角状変形はリモデリングの可能性があり,回旋変形にはほとんどない.上肢では,上腕骨近位部および橈骨遠位部でより多く成長し,下肢では主に膝関節付近,すなわち大腿骨遠位部および脛骨近位部で多く成長する.成長能力が高く活動性の高い,例えば上腕骨近位部骨折のような骨折は,活動性の低くリモデリングが少ない橈骨頚部骨折のような骨折と比較して,リモデリングする可能性が高い.リモデリングを理解しておくことは,各患者の治療を最適化するうえで不可欠である.骨格成長と成熟の基本的理解は小児骨折治療に必須である.
     
    この章では,手術管理が必要な骨折を主に考察する.外側顆と大腿骨頚部の骨折は,手術による治療をしなければ予後不良が確実なため,“fractures of necessity”とよばれている.上腕骨近位部の骨折等は,手術が必要になることはまれである.小児における偽関節はまれであり,生じた場合は通常,開放骨折,骨折部位における軟部組織の介在,病的な病変,ビタミンD欠乏症等の因子が原因である.
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