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著者:David L. Cannon
翻訳:池口良輔(京都大学医学部附属病院リハビリテーション科)
編集:岩崎倫政(北海道大学大学院医学研究院整形外科学)
 
手と指は,職場で最もよくけがをする部位である.米国では,毎年100万件以上の救急外来受診が,仕事関連の手の外傷である.急性外傷を受けた手では,機能回復が治療の目標である.感染を予防し,損傷部位を修復し,一次治癒を促進する必要がある.神経および腱は初期治療で修復されることがあるが,その管理は,徹底的な洗浄およびデブリドマン,骨折および脱臼の正しい安定化,創傷の閉鎖または皮膚移植または皮弁による被覆に次いで重要である.外科医は患者病歴の診察と慎重な身体診察から損傷を評価し,どの初期治療が安全に行えるか,またどの二次処置が後で必要になるかを決定しなければならない.個々の患者に対する最良の治療を適切に決定するには,傷害の種類と重症度だけでなく,患者の仕事,趣味,スポーツの種類も考慮しなければならない.患者が早期に職場または活動に復帰しない場合,長期的な障害はリスクとなる.疼痛レベル,手の機能低下,社会心理的問題,教育,補償,および法的要因のすべてが社会復帰と関連している.

病歴  
    病歴は次の情報を正確かつ簡潔に記載する:(1)負傷の正確な時間(治療前の間隔を決定するため),(2)誰がどこで応急処置を施したか,(3)何らかの薬物を受けたか,質,量,時間,(4)負傷の正確な機序(挫滅の程度,汚染の程度,出血量の測定),(5)患者が摂取した食物および液体の性質,時間,量(麻酔の選択に必要な情報),(6)患者の年齢,職業,勤務地,利き手,全身の健康状態.重度に汚染された創傷,深部の感染が疑われる創傷,出血または血流障害を引き起こす血管損傷を伴う創傷,高圧損傷,および切断または再接着が必要となる可能性がある創傷では,直ちに緊急手術が必要であるため,受傷後の時間を確認することが重要である.
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