著者:James H. Calandruccio
翻訳:中山政憲(国際医療福祉大学医学部整形外科/国際医療福祉大学成田病院)
編集:岩崎倫政(北海道大学大学院医学研究院整形外科学)
手や手関節においては,一見軽微な外傷に対し原則通りの一般的な処置をしたとしても,それをきっかけに二次的な知覚消失,可動域制限,脱力等の機能障害が生じることがある.骨折治療において,解剖学的およびX線像上で完全な骨の整復が行えたとしても,必ずしも正常な機能を取り戻せるとは限らないし,また軟部組織損傷の早期発見かつ正確な評価により,さらに専門的かつ緊急の治療を要することがありうる.わずかな骨折の転位は許容し,適切な副子固定と早期運動を行うことにより良好な機能が得られることもしばしばある.一般に,手の骨折および脱臼の治療においては非観血的治療の方が手術治療よりも望ましく,手術が必要な場合は,求める機能を得るための必要な最低限の手技を選択すべきである.わずかな例外を除き,手の外傷治療において3週間を超える長期の外固定は必要ではない.臨床的な骨癒合はしばしばX線像上での骨癒合より数週間早く,臨床的に骨折部の安定性が確認されれば早期の可動域訓練を行うことが勧められる.