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著者:G. Andrew Murphy
翻訳:村田浩一(京都大学リウマチ性疾患先進医療学)
編集:松田秀一(京都大学大学院医学研究科・整形外科)
 
多くの整形外科医が,高い失敗率と合併症率のために人工足関節置換術を断念したが,足関節炎に対する足関節固定術に代わる治療法の模索が続いており,再び関心が高まっている.足関節の解剖学的構造および運動学的構造により適合した最新のデザインの開発,技術および器具の改良,ならびにコンポーネント固定のための生体へのingrowth材料導入により,人工足関節全置換術(TAA)のデザイン,技術,および転帰を評価する多くの研究が行われるようになった.これらの研究の結果は,多くの疾患に対する従来の足関節固定術の代替としてのTAAの使用の増加となった.外科医がこの技術に習熟するにつれ,特に外傷後関節炎や変形性関節症の患者において,TAAの頻度は過去10年間で劇的に増加した.

人工足関節置換術 の開発  
    1970年代のTAAの最初の報告以来,多くのTAAシステムが導入されてきた.第一世代のセメント固定拘束デザインは非常に安定していたが,設置のために広範な骨切除を必要とし,ゆるみ,沈下および広範な骨溶解のためにしばしば失敗した.第二世代の拘束性の低いインプラントは骨切除の必要性が少なく,セメント固定を必要としなかった.骨人工関節間でのせん断力と捻転が減少したため,ゆるみは少なかった.しかしながら,ポリエチレンの摩耗と破損の増加はコンポーネントの安定性を損ない,しばしばコンポーネントの疼痛性インピンジメントと亜脱臼または完全脱臼につながることとなった.現在の第三世代の半拘束型全足関節置換システムは,脛骨に固定された金属ベースプレート,距骨を表面置換するドーム型または顆部型の金属コンポーネント,および脛骨と距骨コンポーネントの間に介在する超高分子量ポリエチレン製ベアリングサーフェスの3つの成分からなる.ポリエチレン製コンポーネントがベースプレートに固定されるシステムは,しばしば「ツーピース」または「fixed bearing」デザインとよばれ,ポリエチレン成分がベースプレートに取り付けられないシステムは,「スリーピース」またはmobileもしくはmeniscus bearingシステムとよばれる.現在,世界中で50以上の異なるTAAシステムが使用されているが,その大部分は米国食品医薬品局(FDA)によって使用が承認されていない.現在利用可能なシステムの中で,ある特定のデザインが他のデザインより明らかに優れているという説得力のある証拠はない.人工関節の選択は,個々の患者要因,施設要因,および外科医の訓練と経験に依存する.
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