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著者:Tyler J. Brolin
翻訳:近藤直樹(新潟大学医歯学総合病院整形外科)
編集:川島寛之(新潟大学整形外科)
 
この章では肩関節と肘関節の関節固定術の適応と手技,および肩関節周辺で行われる最も一般的な腱移行術について述べる.肩および肘関節固定術後は関節の機能も限定され術後合併症も生じやすい.なおかつより信頼性の高い代替治療が開発されているために,関節固定術の適応はますますまれになっている.一方で,肩関節周囲の腱移行術は,関節形成術が選択肢にならない可能性のある,修復不能な腱板断裂の若年で需要が高く,依然として実行可能な代替治療である.

肩関節固定術  
    歴史的に,肩関節固定術は比較的一般的な手技であった.ポリオによる上肢麻痺や結核による関節症が以前の主な適応であった.手術は成功率が高くその後数十年間で適応が拡大した.ごく早期では,内固定材料も外固定材料も使用されなかった.結核感染に対しては,罹患関節からの全身への播種を防ぐために,肩関節固定術は真に関節外のみで操作する術式が推奨された.しかし,抗結核薬の登場により,この方法は不要となった.その後骨移植術,皮質骨を除去した肩甲上腕関節または鳥口上腕関節,あるいは双方の関節に,さまざまな種類の骨移植術が開発された.これらの手技はすべて長期間のスパイカギプス(spica casting)を必要とした.
     
    関節固定部位を圧迫するために,6週間創外固定を設置し,その後3か月間スパイカギプスを装着した.創外固定のみでの固定後の癒合率は一般に不良であるが,慎重に選択した患者,特に感染が存在する場合や外傷により重度の軟部組織損傷が発生した場合には,依然として有用な手技である.
     
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