発育性股関節形成不全(DDH)には一般的に,大腿骨頭の亜脱臼(部分的な脱臼)または真の寛骨臼からの大腿骨頭の完全脱臼,および寛骨臼形成不全がある.真の先天性股関節脱臼の新生児では,しばしば大腿骨頭の寛骨臼からの脱臼と整復がみられることがある.年長児では,大腿骨頭が脱臼したままとなり,大腿骨頭および寛骨臼に二次的な変化が生じる.
歴史的に,DDHの発生率は出生1000人に約1人と推定されている.文献のメタアナリシスでは,小児科医による診察で判明したDDHの発生率は1000人あたり8.6人,整形外科のスクリーニング検査により1000人あたり11.5人,超音波検査では1000人中25人と推測されている.DDHの推定オッズ比は骨盤位分娩が5.5,女性が4.1,DDHの家族歴が1.7であった.18,060股の超音波スクリーニング検査では,1001股が正常像から逸脱していた(発生率は1000人あたり55.1人).しかしながら,2週目と6週目に繰り返し検査を行うと,90股のみで異常を認め,真のDDH発生率は1000人あたり5人であった.それ以外の超音波検査的なDDHと判定された股関節は,12か月間の経過観察中に真のDDHへ進展することはなかった.DDHは右側よりも左側のほうが多く,両側例が右側例よりも多い.
DDHにはいくつかの危険因子がある.男児よりも女児に多く(多くの報告で5倍),全分娩の3%~4%にあたる骨盤位分娩では,DDHの発生率が有意に増加する.MacEwenとRamseyは,25,000人の乳児を対象とした研究で,骨盤位で出生した女児の場合,35例のうち1例がDDHを発症することを報告した.DDHは第一子に多く,家族歴があればDDHの可能性は10%程度に上昇する.黒人のよりも白人の子どもに多くみられることから,民族的背景が何らかの要因となっている.他にも,ナバホインディアンでの高い発生率や,中国人での比較的低い発生率等が報告されている.