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著者:Robert K. Heck Jr. and Patrick C. Toy
翻訳:大池直樹(新潟大学整形外科)
編集:川島寛之(新潟大学整形外科)

骨肉腫  
    骨肉腫は,悪性細胞による類骨の産生を特徴とする腫瘍である.骨の最も多い非血液学的原発性悪性腫瘍である.発生率は1.3/100万/年である.発症はどの年齢でも起こりうる;しかしながら,原発性高悪性度骨肉腫は10代に最も多く発生する.傍骨性骨肉腫の発生率は30~40代がピークであり,二次性骨肉腫(例:Paget病または以前の放射線治療の状況で発生するもの)は高齢者に多くみられる.発生率は男性でわずかに高い(ただし,女性に多くみられる傍骨性骨肉腫は例外である).人種間に有意差はなく,遺伝因子が関与していることはまれであるが,遺伝性網膜芽細胞腫,Rothmund-Thomson症候群,およびLi-Fraumeni症候群の患者では骨肉腫がより多くみられることがある.すべての骨に発生する可能性がある;しかし,原発性骨肉腫は,大腿骨遠位部,脛骨近位部,上腕骨近位部等,骨が最も急速に成長する部位に発生することが多い.
     
    高悪性度骨肉腫患者のほぼ全例が進行性疼痛を訴える(低悪性度の表在性骨肉腫患者は無痛性腫瘤を報告することがある).疼痛は,初期には保存的な処置および活動の修正で改善することがあり,患者および医師に誤った安心感をもたらす可能性がある.診断が遅れると,最終的に痛みが強くなる.夜間痛は診断の重要な手がかりとなりうる;しかし,この症状を経験する患者は約25%にすぎない.初診時には,患者はより一般的な筋骨格系疾患と誤診されることが多い.ある研究では,症状の発現から正しい診断までの平均遅延期間は約15週間であった.これには,患者側の平均6週間の遅れ(症状の発症から医師への受診までの時間)と医師側の平均9週間の遅れ(初診から正しい診断までの時間)の合計によるものである.医師側の遅れの主な理由には,初診時にX線検査を行えなかったこと,さらに重大なことに,患者の症状が持続または悪化してもX線写真を再撮影できなかったこともあった.
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