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著者:G. Andrew Murphy
翻訳:軽辺朋子(聖マリアンナ医科大学整形外科学講座),秋山唯(聖マリアンナ医科大学整形外科学講座)
編集:仁木久照(聖マリアンナ医科大学整形外科学講座/聖マリアンナ医科大学病院整形外科,人工関節センター,リウマチ・膠原病生涯治療センター)

外反母趾(バニオン)  
    外反母趾(母趾の側方偏位)は,その名が示すような単一の疾患ではなく,母趾列が複雑に変形し,しばしば第二~第五趾に変形と症状を伴う.第一中足骨と第二中足骨の骨軸のなす角度は正常の上限である8~9度より大きく,第一中足趾節関節の外反角度も正常の上限である15~20度より大きい(図82.1).通常,第一中足趾節関節の外反角度が30~35度を超えると母趾の回内が生じる.母趾外転筋は正常では第一中足趾節関節の屈曲-伸展軸に対して底側にあるが,この回内変形によりさらに底側に移動する(図82.2).内側を制御する唯一の構造は,種子骨関節包部(基節骨の基部に停止)および関節包基節骨部(蹠側板に停止)からなる内側関節包靱帯である.母趾内転筋は母趾外転筋に拮抗せず,母趾を外反方向に牽引し,内側関節包靱帯(特に種子骨関節包部)を伸展してこの構造を脆弱化させ,中足骨頭は種子骨上から内側へ移動する.さらに,短母趾屈筋,長母趾屈筋,母趾内転筋,および長母趾伸筋は中足趾節関節の外反モーメントを増大し,母趾列をさらに変形させる.横中足骨間靱帯は中足趾節関節で蹠側板の間を走り,中足骨頭には付着していない.最後に,第一中足骨頭底側の種子骨隆起(crista)は,内側種子骨からの圧迫で平坦化する(図82.3).これにより,外側種子骨は部分的または完全に第一中足骨間腔(図82.1を参照)に移動する.この状況において,母趾への荷重がより少なくなると,第二~五中足骨頭への荷重はより多くなり,中足痛,胼胝および第二~五中足骨の疲労骨折を伴うようになる.
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