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Part 1 > Chapter 2 整形外科における高度な画像診断

著者:Dexter H. Witte III
翻訳:大槻文悟(京都大学大学院医学研究科・整形外科 )
編集:松田秀一(京都大学大学院医学研究科・整形外科 )
 
現在,ルーチンのX線撮影は整形外科における主要な画像診断法であるが,より高度な画像技術は現代の整形外科診療に不可欠である.磁気共鳴イメージング(MRI),コンピュータ断層撮影(CT)および超音波検査のような診断装置は,価値ある診断ツールであり,画像誘導治療技術の根幹をなすものである.整形外科領域におけるこれらの先進的な画像技術の範囲は,1つの章で扱うにはあまりにも広い.したがって,本章では整形外科におけるMRIおよびCTの使用について簡単に説明する.筋骨格系の超音波検査については,適宜,さまざまな章で概説する.

磁気共鳴画像法  
    ルーチンのX線撮影以外に,MRIほど現在の整形外科診療に大きな影響を与える画像診断法はない.MRIは,卓越した軟部組織コントラストおよび多断面撮影機能を有し,CTに近い空間分解能を有する.その結果,MRIは脊髄造影,関節造影,さらには血管造影等の従来の画像診断法に取って代わるものとなってきている.過去40年間で,MRIは現代の整形外科診療において重要な役割を果たすように成熟してきた.
     
    放射線撮影やCTとは異なり,MR画像は有害な電離放射線を使用せずに生成される.患者を強い磁場(地球の磁場の数万倍の強さ)の中に置くことでMR画像は撮影される.磁力は磁場内の原子核,特に陽子や中性子の数が奇数の元素の原子核に影響を与える.この基準を満たす最も豊富な元素は水素であり,水と脂肪で豊富に存在する.これらの原子核は本質的に陽子であり,量子スピンをもっている.患者の組織がこの強い磁場にさらされると,陽子は磁場に対して整列する.すべてのイメージングはまず一定の磁力をかけることで,定常状態,つまり平衡状態にすることからはじまる.この定常状態において,高周波パルスを印加すると,磁場中の磁化されたプロトンが励起され,定常状態が崩される.このパルスの印加後,励起された陽子が緩和または平衡に戻るときに生成される高周波パルスを受信コイルまたはアンテナが感知する.そしてこの信号を用いてMR画像が生成される.
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