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著者:William C. Warner Jr. and James H. Beaty
翻訳:福岡真二(福岡県こども療育センター新光園),鳥越清之(北九州市立総合療育センター),河村好香(北九州市立総合療育センター),松尾圭介(北九州市立総合療育センター)
編集:山口亮介(九州大学整形外科)

脊髄灰白質炎(急性灰白髄炎,ポリオ)  
    脊髄灰白質炎〔訳注:急性灰白質炎,ポリオ〕は,脊髄前角細胞および特定の脳幹運動核に限局するウイルス感染症である.3種類のポリオウイルスのうちの1つが通常は感染の原因となるが,エンテロウイルス属に属するポリオウイルス以外のウイルスが原因となって,臨床的にも病理学的にも脊髄灰白質炎と区別できない状態を生じることがある.ウイルス伝播は主に糞口感染であり,ウイルスによる最初の侵入は消化管および気道を介して起こり,血行性経路を介して中枢神経系に広がる.常在地域ではほとんどの人がポリオウイルスに感染しているが,麻痺型の脊髄灰白質炎を発症するのは感染者の0.5%のみである.
     
    ポリオワクチンの導入と広範な使用以来,脊髄灰白質炎の発生率は劇的に減少した.1988年には推定35万人の患者が存在したが,2013年に報告された症例は400例未満であった.2017年には22件,2018年には29件の報告があった.現在は,熱帯と亜熱帯の新興国の5歳未満の小児,および予防接種を受けていない個人に最も多くみられる.2014年にWHOによってポリオ常在国と分類されたのは,わずか3カ国(アフガニスタン,ナイジェリア,パキスタン)であった.脊髄灰白質炎の散発的な集団発生が1990年代に北米とヨーロッパで発生した.
     
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