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著者:Norfleet Thompson
翻訳:遠藤健(北海道大学大学院医学研究院整形外科)
編集:岩崎倫政(北海道大学大学院医学研究院整形外科学)
 
高度に適応した機能であるつまむ,握る,引っ掛ける,といった動作を可能とするには,感覚,筋の可動性,強度が必要である.肢位の変化や繊細な動作は,手指,手関節,前腕の29の骨から構成される多数の関節と,運動や安定にかかわる50の筋肉によって可能となる.意図を持った運動を可能にするためには,動きはコントロールされ,また関節は通過する腱とその拮抗筋によって安定していなければならない.
 
正常な上肢は,さまざまな協調的な外在筋および内在筋の相同筋活動を通して,手の位置をリズミカルに調整することができる.筋肉活動は無意識および意識下に制御され,反復によりパターン化される.筋の運動パターンの中には,無限に協調して反復して作用するものがあり,それらは協力的,または共同的(シナジー)に動作すると言われている(図71.1).例えば,手関節伸筋,指屈筋,および指内転筋は容易に連動し,共同的である.同様に,手関節屈筋,手指伸筋,および指外転筋は共同的である.手関節を屈曲,手指を伸展,外転した位置から始め,手関節伸展,手指屈曲位とし,また元の位置に戻すことは容易にできる.しかし,手関節伸展,手指伸展位から,手関節屈曲,手指屈曲位とし,また元の位置に戻す動作は,よりゆっくりとした,よりぎこちない動きになり,意識的に行う必要がある.
 
手の主要な筋肉が麻痺すると,手のバランスが崩れる.拮抗筋の収縮が不十分であると,しばしば不可逆性の拘縮につながる.拘縮によって手の安定性が増すこともありうるが,通常は手の機能障害が悪化する.
 
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