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著者:David R. Richardson
翻訳:山本哲也(Postdoctoral Associate, Department of Orthopaedic Surgery, University of Pittsburgh Medical Center, USA)
編集:仁木久照(聖マリアンナ医科大学整形外科学講座/聖マリアンナ医科大学病院整形外科,人工関節センター,リウマチ・膠原病生涯治療センター)
 
スポーツに参加することは,足や足関節の怪我につながる.しかし,アスリートでなくても,捻転,衝突,挫傷,反復性外傷を経験することがある.また,先行する外傷によって発症する疾患もある.病歴は非特異的で,症状は治まっている場合がある(例:足関節の軟骨軟化症または離断性骨軟骨炎).骨折や脱臼の他に,外傷は少なくとも3種類の関節障害を引き起こす:(1)関節破壊を伴う急性の重度靱帯損傷,(2)単発または反復的な「使い過ぎ」による軽度靱帯損傷(関節破壊は伴わないが関節に軽微な異常を認める),(3)既存の関節異常の悪化である.外傷に起因するものではないが,運動,レクリエーション,職業上の活動によって悪化する可能性のある関節障害については,第48章で説明する.

急性靱帯損傷  
    足関節外傷の85%は捻挫であり,その85%は内がえしにより生じる.スポーツ外傷のうち14〜21%が足関節外傷である(バスケットボールでは約40%,サッカーでは約25%).また,バレーボールやアメリカンフットボールは足関節の靱帯損傷のリスクが特に高い.同じようなスポーツをした場合,女性は男性と比較して足関節の靱帯損傷の発生率がやや高い.一方で,男性では足関節内側と遠位脛腓間靱帯結合(シンデスモーシス)の捻挫の発生率が高い.平均身長と体重の高値,BMIの高値,特定のスポーツ活動(例:バスケットボール,チアリーディング,ラグビー)も,足関節捻挫の危険因子となりうる.
     
    足関節の靱帯損傷は,O’Donoghueにより分類され,軽度の靱帯「伸展」損傷(I型捻挫),不完全な靱帯断裂(II型捻挫),靱帯の完全断裂(III型捻挫)のいずれかが発生する.より実践的なアプローチは,ストレステストによる足関節の安定性と患者の機能レベルに基づく(ボックス90.1).外がえし,外転により三角靱帯が断裂することがある.しかし,より一般的なのは内がえしによる足関節外側靱帯の断裂である(通常は前距腓靱帯または踵腓靱帯).診断と治療は,足関節周囲の靱帯と筋肉の構造を理解することで行われる.
     
    ボックス90.1 足関節靱帯損傷と治療に関する推奨事項
    急性
    安定した足関節(臨床検査とX線検査,必要に応じて麻酔を使用)
    対症療法
    不安定な足関節(+前方引き出しまたは距骨傾斜が臨床的およびX線検査でみられる)
    要求度が低い患者
    機能的治療
    要求度が高い患者
    外科的介入
     
    慢性
    持続性の疼痛または機能的不安定がある
    診察および画像検査に基づく外科的介入
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