頚椎椎間板変性症(DDD)は,特定の診断名ではなく,さまざまな病態が関与する病態生理学的プロセスである.頚椎DDDの症状は頚部痛や頭痛から頚部神経根障害や脊髄障害にまで多岐にわたる.幸いなことに,これらの病態のほとんどは手術に至ることなく経過をみることができる.症状および徴候が持続性または進行性である場合には,外科的介入が必要となることがある.臨床医の仕事は,症状を説明する最も具体的な診断を確定し,最適な治療を施すことである.
椎間板変性と区別されるべき軸椎疼痛は,最も頻度の高い筋骨格系の愁訴である.頚椎,胸椎,腰椎のいずれの軸椎疼痛も,しばしば椎間板変性に起因する.椎間板変性は常に痛みを引き起こすわけではないが,椎間板内の障害や椎間板ヘルニアを引き起こすことがある.これらの診断にはそれぞれ固有の臨床所見と治療法がある.
椎間板変性に対する遺伝的影響は,複数の遺伝子のそれぞれによる小さな影響とより少数の遺伝子の比較的大きな影響による.今日まで,椎間板変性に関連するいくつかの特異的な遺伝子座が同定されている.この特異的な遺伝子と椎間板変性症の変化との関連が確認されている.その他,アグリカン遺伝子,メタロプロテイナーゼ-3遺伝子,IX型コラーゲン,およびα2,3遺伝子型における他の変異も,椎間板の病態や症状と関連している.
非特異的な軸性疼痛は国際的な健康問題として重要であり,椎間板ヘルニアに関連する疼痛と鑑別する必要がある.約80%の人が生涯のうちに一度はこの症状に悩まされている.腰背部と脊椎の障害は,健康統計のための国立センター(www.cdc.gov/nchs)により45歳未満の人における活動制限の最も頻度の高い原因とされている.典型的に椎間板由来の疼痛とされる軸性疼痛は,椎間板自体からは生じないこともある.