橈骨動脈が深掌動脈弓として手につながり,尺骨動脈が浅掌動脈弓として手につながることで,手への循環は通常,ほとんどの病気および損傷にもかかわらず指を存続させるのに十分である.浅掌動脈弓はほぼ80%の手で完全であり,約20%で不完全である.約98%の手で深掌動脈弓は完全に存在する.橈骨動脈は通常,手指の57%で3指以上への血流の大部分を供給するが,尺骨動脈は約22%で3指以上への血流を供給する.両動脈から等しく供給される血流は,ほぼ22%である.
手の虚血性障害は,橈骨動脈,尺骨動脈,指動脈の動脈瘤,血栓症,または塞栓症に起因しうる.動脈閉塞性虚血は,直接打撃,血管造影に対する血管樹の器具使用,血管アクセス方法および動脈硬化および各種のコラーゲン血管疾患のような全身疾患と関連し発症する.
虚血,疼痛,感覚の変化,皮膚の変色,潰瘍形成,壊死の症状は,喫煙,活動,寒冷への曝露によって悪化しうる.身体所見には,手または指の蒼白またはチアノーゼ,皮膚潰瘍,閉塞部位より遠位の壊死,侵された神経の感覚的およびおそらく運動的変化,触診に対する冷たさ,動脈瘤または血栓性の腫瘤の上の圧痛,動脈瘤を通して触知可能な振戦,および損傷した血管では血流不足を示すAllenテスト(図70.1および70.2)がある.遠位血管の攣縮により,この病態はRaynaud病等の他の病態と混同されることがある.単純X線写真,Doppler血流評価,超音波検査,脈拍数の記録,分節性動脈測定,皮膚温測定,核医学検査,磁気共鳴血管造影,および造影血管造影が有用な診断手段である.血管造影は,主要病変の位置と範囲に関する決定的な情報を提供し,上肢および虚血に直面している他の循環障害の存在は,画像技術の第一選択であるべきである.虚血がなければ,超音波Doppler法,CT血管造影,MR血管造影が有用である.