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著者:Clayton C. Bettin
翻訳:藤井貴之(京都大学リウマチ性疾患先進医療学)
編集:松田秀一(京都大学大学院医学研究科・整形外科 )
 
足関節炎は身体的に障害のある状態であり,その治療は患者と治療する医師にとって困難であるが,同時に治療しがいのある病態でもある.足関節炎の患者では歩行障害がよくみられ,膝,股関節,または背部の関連痛がしばしば全身の健康障害の一因となる.関節固定術は,治療成績が常に完全であるとは限らないが,適切に選択された患者において,安定した痛みのない足関節と,機能および生活の質の劇的な改善を得ることができる.人工足関節全置換術が行われる割合は増加しているが,関節固定術は多くの症候性足関節炎患者にとって選択すべき手技である.
 
足関節の生体力学的側面は関節固定術に特に適している.足関節は脛骨距骨関節の運動範囲全体にわたって連続的に変化する回転軸を有する蝶番関節であるが,中間位での固定は四肢に重度の生体力学的影響を生じない.距骨は,距腿関節窩の明確で安定した構造内に位置する.内果,脛骨天蓋,外果によって支持され,これらはすべて関節固定のための潜在的な骨表面を提供する.正常な歩行では,10~12度の足関節伸展および20度の足関節屈曲があれば十分であるため,足関節底背屈運動の喪失は重大ではない.これとは対照的に,膝関節や股関節では,わずかな運動障害でも日常生活動作に支障をきたすことがある.正常な歩行に必要な矢状面運動は,体内では可動性を有する横足根関節により,体外では足関節固定術を受けた患者におけるロッカーソールシューズの使用により代償されることがある.

足関節固定術の代替法