椎間板変性症は,その自然史や基礎科学的な理解が進んでいるにもかかわらず,治療成績が大きく異なる疾患である.変性椎間板に対する治療選択肢に不足はない.不足しがちなのは,患者の主訴の具体的な原因についての理解である.William Kirkaldy-Willisが椎間板変性のスペクトルとその病理学的進行を説明したにもかかわらず,特定の診断をもたらす病歴,身体診察,および画像との臨床的相関は依然として最大の課題である.過去数十年にわたり,腰背部痛や下肢痛を有する患者を対象とした研究が行われ,特定の診断が可能な患者の治療が改善されてきた.しかし,腰痛や下肢痛で受診する患者のうち,このような患者は依然として少数派である.複雑な心理社会的問題,抑うつ,および二次的利得は,これらの患者を評価する際に考慮すべき非解剖学的問題のほんの一部である.さらに,我々の理解が深まり,診断能力が向上するにつれて,これらの症状に対する解剖学的原因の数は,増加している.
椎間板変性と区別されるべき軸性疼痛は,最も頻度の高い筋骨格系の愁訴である.頚椎,胸椎,腰椎のいずれの軸性疼痛も,しばしば椎間板変性に起因する.この変性過程は常に疼痛を引き起こすわけではないが,画像上で認められる椎間板内の障害,椎間板ヘルニア,椎間関節症,変性すべり症,および狭窄症につながる可能性がある.これらの病的過程のそれぞれに,固有の臨床所見と治療法がある.また,これらの特定の病的状態に対する治療成績も,それらが同じ病因スペクトルに属するにもかかわらず,大きく異なる.椎間板変性と関連病理の理解は過去数年間で著しく変化した.