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著者:John C. Weinlein
翻訳:加藤成隆(福島県立医科大学外傷学講座)
編集:渡部欣忍(帝京大学医学部附属病院外傷センター)
 
米国における大腿骨近位部骨折の数は増加し続けており(45歳以上の患者において2050年までに年間45.8~103.7万件の大腿骨近位部骨折が発生すると推定されている),整形外科医はこの差し迫った公衆衛生上の危機への対処を求められている.ほとんどの大腿骨近位部骨折は高齢者で起こるが,自動車事故から生還し,股関節の高エネルギー外傷を呈する若年患者も増えてきている.これら2つの集団における大腿骨近位部骨折は非常に異なる特徴があり,これらの違いを理解することは,罹患率や死亡率を最小限に抑え,患者を受傷前の機能状態に回復させるための適切な治療法を決定するのに役立つ.

大腿骨頚部骨折  
    大腿骨頚部骨折は主に高齢者に発生し,一般的に低エネルギーの転倒が原因で,骨粗鬆症と関連している可能性がある.若年者の大腿骨頚部骨折は全く異なる損傷であり,治療法も全く異なる.若年者の大腿骨頚部骨折は一般的には高エネルギーの受傷機転の結果であり,合併損傷を伴うことが多い.ほとんどの大腿骨頚部骨折は関節包内骨折であり,大腿骨頭への限られた血液供給を損なう可能性がある(図55.1).この血液供給は,インプラント設置の際だけでなく大腿骨近位部へのアプローチにおいても理解しておかなければならない.上支帯動脈は大腿骨頭への血流の主要な経路であることはよく知られているが,最近,下支帯動脈も重要な血流経路であり,解剖学的知見と一致することが示されている.
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