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著者:Benjamin M. Mauck
翻訳:山口徹(福岡市立こども病院整形・脊椎外科),髙村和幸(福岡市立こども病院運動器センター)
編集:山口亮介(九州大学整形外科)
 
この章では,先天性肩甲骨高位症,先天性斜頚,鎖骨,橈骨,尺骨の先天性偽関節について述べる.手の先天異常と前腕の先天異常については第81章で述べる.脊椎の先天性疾患については第43章と第44章で述べる.

先天性肩甲骨高位症(Sprengel変形)  
    1863年にEulenbergにより最初に記述されたSprengel変形は,胸郭と関係した肩甲骨の先天性上方挙上として特徴付けられる.肩甲骨は一般的に低形成で変形している(図31.1).頚肋,肋骨奇形,頚椎奇形(Klippel-Feil症候群)等,他の先天異常を認めることもある.まれに,肩甲骨の筋肉が部分的または完全に欠損することもある.この変形の存在は,しばしば他の器官系の異常を示しうる.機能障害の重症度は,通常変形の重症度に関連する(表31.1).変形が軽度の場合,肩甲骨の位置はわずかに挙上するだけで,正常よりもわずかに小さく,その動きは軽度に制限される.しかし,変形が重度の場合,肩甲骨は非常に小さく,後頭部に触れるほど高くなることがある.患者の頭部はしばしば患側に偏位する.肩関節運動の主な制限は,肩甲胸郭運動の低下に続発する外転である.約半数の患者では,過剰な小骨である肩甲脊椎骨が存在する.これは強い筋膜鞘の中にある軟骨と骨の菱形状の板で,肩甲骨の上角から1つ以上の下位頚椎の棘突起,椎板,または横突起に伸びる.この異常を認識することは外科的管理に必須である.同様の骨構造が肩甲骨の内側縁から後頭に広がっていることも報告されている.時に,脊椎骨と肩甲骨の間によく発達した関節が見られる;線維組織のみによって肩甲骨に付着することもある.棘突起と肩甲骨の間の硬い骨隆起はまれである.
     
    表31.1  Cavendish分類
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