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著者:Benjamin M. Mauck
翻訳:遠藤健(北海道大学大学院医学研究院整形外科)
編集:岩崎倫政(北海道大学大学院医学研究院整形外科学)
 
脳性麻痺は,出生前または周産期に発生する非進行性,非遺伝性の脳症であり,運動,感覚,およびしばしば知的機能の変化を特徴とする.脳性麻痺は先進国では年間に出生1000人あたり2人の頻度で発生する.小児期の最も一般的な運動障害である脳性麻痺は,胎児の脳卒中,酸素欠乏,感染症,催奇形因子,中枢神経系の奇形,代謝性疾患,および早産によって引き起こされる可能性がある.疫学的研究では,脳性麻痺は主に代謝性の要因によるもので,新生児期の虚血によるものではないことが示唆されている.症例の約75%は子宮内,5%は分娩中,15%~20%は分娩後に発生する.多胎妊娠や子宮内感染も一般的な危険因子である.脳性麻痺は,痙性片麻痺,両麻痺,対麻痺,および四肢麻痺を含む錐体路障害,またはアテトーゼおよび運動失調パターンを含む錐体外路障害に分類される.混合型は痙性とアテトーゼを伴うこともある(第33章を参照).手の機能は,おそらく痙性対麻痺を除くすべての型で,ある程度障害されており,最も一般的な変形として,肩内転,内旋,肘屈曲,前腕回内,手関節および手指の屈曲,掌内母指変形,スワンネック変形を呈する(図72.1).これらの変形を矯正するために多くの外科的処置が行われてきた.初期の治療結果は予測不能で期待外れであり,これは主に患者選択が不適切なためであった.Green,Goldner,Swanson,Zancolliら,Hofferらの多くの業績によって,脳性麻痺患者の手の評価と管理に関しての原則が証明された.

患者評価