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著者:William J. Weller
翻訳:森崎裕(NTT東日本関東病院整形外科)
編集:岩崎倫政(北海道大学大学院医学研究院整形外科学)
 

狭窄性腱鞘炎  
    手部および手関節の狭窄性腱鞘炎は,一般的な病態ではあるが重大な機能障害をもたらす.その治療は通常単純で,適切な治療がなされれば症状は軽快する.第一背側コンパートメントにて短母指伸筋(EPB)および長母指外転筋(APL)腱が侵されたものは,1895年にこの疾患を記載したスイスの医師Fritz de Quervainの名前を冠してDe Quervain腱鞘炎とよばれる.伸筋支帯近位の腱周囲炎は一部の患者では疼痛,腫脹,捻髪音を引き起こす.また,腱の弾発現象や第一背側区画の嚢胞形成も起こりうる.
     
    母指および手指の前腕を起始とする屈筋腱に局所的な腫脹が生じると,種々の腱-腱鞘接触面に機械的症状をきたすことがある.頻度は低いが,長母指伸筋腱がLister結節のレベルで侵されることもあり,伸筋支帯の下を通るその他の腱も侵されることがある.狭窄に先行する腱鞘炎は,発症前の膠原病や,大工や給仕スタッフが経験するような繰り返される軽度の外傷が原因である可能性がある.急性の外傷が契機となることも時にあるが,多くは明らかな誘因なく徐々に発生する.狭窄は,線維性腱鞘が滑車として働き摩擦が最大となる部位である,腱の滑走方向が変化する点で起こる.滑膜によって腱鞘は潤滑されているが,特定の動きが繰り返される際には摩擦によって組織反応が生じることがある.
     
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