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著者:Anthony A. Mascioli and Ashley L. Park
翻訳:有泉高志(新潟大学整形外科)
編集:川島寛之(新潟大学整形外科)
 
急性化膿性関節炎は,血行性感染や外傷,手術による直接的な波及,隣接する骨髄炎や蜂窩織炎からの進展により,関節内への細菌が侵入した結果生じる.急性化膿性関節炎の病態生理および治療に関する詳細な研究にもかかわらず,特に高齢の患者での罹患率と死亡率は,依然として高い.菌種の違いと個々人の免疫状態によって,化膿性関節炎になることもあれば,軽度の感染症にとどまることもある.近年の抗菌薬やその他の治療法を行っても,重篤な合併症を免れることができない場合がある.感染による遅発性合併症の最も一般的な原因は,診断ならびに迅速な治療開始の遅れである.
 
Mathewsらによるシステマティックレビューでは,化膿性関節炎の危険因子として,関節リウマチ,変形性関節症,人工関節,社会経済的地位の低さ,静脈内薬物乱用,アルコール依存症,糖尿病,関節内コルチコステロイド注射の既往,皮膚潰瘍等が挙げられている.

臨床像  
    急性化膿性関節炎はどの年代にも生じうるが,小児および高齢者が最も罹患しやすく,特に先行外傷や血友病,変形性関節症,関節リウマチ等,すでに関節に異常がある場合にその傾向が強い.免疫不全者や,癌,糖尿病,アルコール依存症,肝硬変,尿毒症等の疾患は,感染の危険性が増加する.一般に,易感染性状態と特定の種類の原因菌との間には関連性(表22.1)があるため,病歴聴取と身体診察を十分に行う.
     
    表22.1 一般的な臨床環境で見受けられる化膿性関節炎の原因微生物
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