著者:Marcus C. Ford
翻訳:今井教雄(新潟大学整形外科)
編集:川島寛之(新潟大学整形外科)
下肢切断は全切断術の中で最も頻繁に行われる.血管再生技術の進歩にもかかわらず,下肢切断の最も一般的な適応は,糖尿病および末梢血管疾患によるものを含め,依然として虚血である.あらゆる原因による末梢血行障害は800万人以上の米国人に悪影響を与えている.米国人における下肢切断の割合は,1000人あたり約4人である.血行障害に伴った下肢切断患者の30%~50%では,5年以内に対側肢の切断が必要となっている.膝下切断患者の20%は膝上切断に移行している.非外傷性切断の50%以上は糖尿病関連の病態から生じる.糖尿病患者においては,切断術後の1年死亡率は40%と高いことが報告されているが,切断術後全体での死亡率は60%~70%である.
米国では,手術技術や医学の進歩により,腫瘍や感染症等,糖尿病や血管性疾患以外の原因による切断の数が減少している.戦争で荒廃した国々では,即席爆発装置や地雷が外傷性切断の原因となっていることがいまだに多い.また,軍人の中でも戦闘に関連した下肢切断の割合はいまだに高い.この非常に活動性の高い集団における最適な下肢切断技術に関して,現在研究レベルIおよびIIの研究を進められている.
下肢切断の医学的管理に関しては集学的アプローチを推奨する.糖尿病患者および下肢切断歴のある血管機能不全患者は,30日死亡率,断端合併症,および再入院率が高い.冠動脈関連疾患および末期腎疾患は,周術期合併症および再入院の予測因子である.