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著者:Mark T. Jobe and Santos F. Martinez and William J. Weller
翻訳:坂なつみ(帝京大学医学部/Department of Health Reseach Methods, Evidence & Impact, McMaster University)
編集:渡部欣忍(帝京大学医学部附属病院外傷センター)
 
末梢神経損傷はよくみられる外傷である.マイクロサージャリー技術と神経束間移植には大きな進歩がみられているが,SeddonとWoodhallが研究を積み重ねることで明らかにした,第二次世界大戦の経験に基づく多くの治療原理は今日でも通用する.薬剤,免疫系調節,神経成長促進因子および人工神経に焦点を当てた現在の研究は有望ではあるが,これまでのところ臨床応用はほとんどされておらず,神経修復によって有用な機能を回復できる患者はわずか50%である.
 
この章では,末梢神経損傷の診断と治療について述べ,手術手技と術後管理の詳細は各神経の考察に含めて解説している.発生学,顕微鏡的解剖学,生理学の詳細については,他の著作物を参照してほしい.適切な再建手術については本書の他のセクションで説明し,相互に参照できるようにしている.

脊髄神経の解剖  
    脊髄神経は,背側の感覚神経根と腹側の運動神経根とが癒合し,椎間孔またはその近傍に各髄節を形成する.大部分の胸髄節では,これらの混合した脊髄神経は自律性を維持し,1つの肋間皮節と1つの筋節を支配している.胸髄節以外のほとんどの部位では,いくつかの髄節から出る脊髄神経が合流して,四肢を支配する神経叢または原始的な筋節パターンをもはや保持しない特殊な体節を形成する.合計31対の混合した脊髄神経,すなわち8対の頚神経,12対の胸神経,5対の腰神経,5対の仙骨神経,1対の尾骨神経が脊椎の両側の椎間孔から出て同側の体幹と四肢を支配する.
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