コンパートメント症候群では,骨・筋膜で囲まれた区画内圧が上昇し,微小循環障害が起こる.比較的柔軟性の低い筋膜または骨構造を有する区画に発生することが最も多く,特に下腿の前方および深後方区画(図48.1)および前腕の掌側区画に多くみられる.コンパートメント症候群は,殿部,大腿,肩,手,足,腕,腰部の傍脊柱筋等,骨格筋が強固な筋膜に囲まれている部位であればどこにでも発生しうる.
コンパートメント症候群は,区画内圧上昇の原因および症状の持続期間に応じて,急性または慢性に分類できる.急性コンパートメント症候群の最も一般的な原因は,骨折,軟部組織損傷,動脈損傷,意識障害時の四肢圧迫,熱傷である.その他の原因には,静脈輸液の血管外漏出や抗凝固薬の使用等がある.急性労作性コンパートメント症候群は,ランナー,バスケットボール選手等,スポーツ選手の足部での発生が報告されている.慢性労作性コンパートメント症候群(chronic exertional compartment syndrome: CECS)は再発性の区画内圧上昇であり,下腿の前方または深後方コンパートメントに最も多く生じる.運動によって筋肉量は20%増加し,柔軟性の低下したコンパートメントの内圧が上昇する.下肢の労作性コンパートメント症候群は,長距離走者および軍入隊者において機能的耐容能を超えた場合に最もよくみられる.また,重量挙げ選手,ボート漕手,溶接工,および上肢に大きな負担がかかる人の前腕等,他の部位にも発生することが報告されている.