著者:Patrick C. Toy
翻訳:近藤直樹(新潟大学医歯学総合病院整形外科)
編集:川島寛之(新潟大学整形外科)
切断術は最も古くから行われている外科的処置である.歴史的にみて,切断技術と義肢デザインは,戦争の余波によって富に進歩した.早期に行われていた切断術は,無麻酔にて患者の四肢を迅速に切断する粗雑なものであった.切断端は破砕されるか,沸騰油に浸漬して止血した.この止血のための手技は,出血および感染を生じやすく高い合併症および死亡率と関連していた.この時代の外科医は,治療成績に影響を与え,痛みを最小限に抑えるためには,彼らの効率と技術に頼るしかなかった.生存した患者であっても,得られた切断端は義肢装具への適合性が悪かった.
結紮技術を最初に用いたのはHippocratesである;この技術は暗黒時代に失われたが,1529年にフランスの軍医Ambroise Paréによって再び導入された.Paréは「動脈鉗子」も導入した.これらの技術により機能的な断端形成が可能となり,死亡率は大幅に低下した.彼はまた,比較的精巧な義肢装具を設計した.1674年にMorel(モレル)が止血帯を導入し,1867年にLister(リスター)が消毒技術を導入したことで,さらに切断術が進歩した.感染の微生物説に基づいて,Listerは患者の皮膚,外科医の手,手術器具,および周囲の手術室の空気をフェノールで処理することを確立した.その結果,外科的敗血症の発生率および関連する死亡率は劇的に低下した.19世紀後半になり,クロロホルムとエーテルによる全身麻酔を使用することで,外科医は初めて適度に丈夫で機能的な断端を形成できるようになった.
米国では1940年代に,退役軍人が義肢の性能の悪さについて懸念を表明し始め,陸軍軍医長Norman T.Kirkは米国科学アカデミーに協力を求めた.これにより,義肢諮問委員会が設立され後に義肢学研究会,そして最終的に義肢研究開発委員会(CPRD)へと変遷した.