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著者:Benjamin J. Grear
翻訳:秋山唯(聖マリアンナ医科大学整形外科学講座)
編集:仁木久照(聖マリアンナ医科大学整形外科学講座/聖マリアンナ医科大学病院整形外科,人工関節センター,リウマチ・膠原病生涯治療センター)
 
足趾の爪の変形や病気は,足部の障害の中で最もよくみられるものである.症状は軽い不快感から生命を脅かす重篤な状態,また手足を脅かす重篤な状態までさまざまであり,足趾の爪の異常は全身疾患の徴候である可能性もある.爪の病気に伴う痛みは日常生活に著しい影響を及ぼす.爪の障害を有する患者55人を対象とした研究では,爪の障害は下肢の機能障害と有意に相関し,高齢者では転倒リスクが増大する可能性が高いことが報告されている.多くの特異的な爪の病理および関連した全身疾患は整形外科学の範囲外であるが,認識および基本的な理解は,足部・足関節の診療において重要である.本章では,全身性疾患,腫瘍,後天性疾患,および手術手技に関連する爪の病理に焦点を当てる.

解剖  
    正常のネイルコンプレックスは,爪甲,爪床,および周囲の皮膚から構成される.爪甲は爪であり,爪甲の皮膚の下にある根部と,爪甲の露出部分である体部の2つの部分から構成される.爪甲は角質化した細胞の層が重なり構成されている.爪甲の下の爪床は,爪床と爪母の2つのコンポーネントからなる.この爪床の遠位縁は,爪板を介して爪板の基部にある青白い三日月状の組織として見ることができる.このように見える爪母の部分を爪半月という.爪半月の遠位縁から,爪母は近位側に5~8 mm,後爪郭の深部まで伸びている.爪母は隣接する爪床よりも平滑で蒼白であり,爪甲の縦方向の成長に寄与する(図88.1 A).爪母の遠位側では,爪床が爪甲の血管床を形成する.爪の外側に張り出した皮膚の辺縁は側爪郭とよぶ.後爪郭はとよばれ,爪根を覆って爪甲に接着する遠位延長部がである.最後に,爪下は爪の遠位に位置する肥厚した皮膚である.
     
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